山口県とKDDIが包括連携協定を締結!「3つの維新」と山口衛星通信所を現地レポート

キャリア・通信

*本ページ内のリンクには広告が含まれています。

2026年9月2日、山口県とKDDI株式会社は、地域課題の解決および持続可能な地域社会の実現を目的とした地域活性化包括連携協定を締結しました。

山口県庁にて執り行われた締結式には、山口県の村岡嗣政知事とKDDI代表取締役社長CEOの松田浩路氏が出席し、協定書への署名を行っています。

半世紀を超える歴史的パートナーシップ

KDDIにとって山口県は、1969年に「山口衛星通信所」を開設して以来、50年以上にわたり日本と世界をつなぐ国際通信を提供してきた重要な拠点です。同通信所は、1979年に世界初となる南極からのテレビ生中継を伝送した実績を持ち、70年に及ぶ日本の南極観測協力や衛星通信の発展を陰で支え続けてきました。

本協定では、KDDIが保有する宇宙通信、AI、ドローン、位置情報ビッグデータなどの先進技術と、山口県の地域資源を組み合わせることで、連携・協働を進めることが定められています。

KDDI松田社長のグループインタビューに見る「地域共創戦略」

締結式およびその後のグループインタビュー・記者会見において、KDDIの松田浩路社長は、自らの原体験や地方創生に向けた強い意気込みを語りました。

山口県岩国市出身である松田社長は、小学生時代の社会科見学で県内工場を巡った記憶や、中学生の頃から山口衛星通信所の存在を知っていたことなど、自身の原体験が地方の現場を重視する経営姿勢に影響を与えていると明かしています。

KDDIは、従来のインフラ下支えから一歩踏み出し、主体的に地域経営に関与することで「宇宙から選ばれる街」といったシンボリックな成果を生み出す方針を示しています。

山口県が掲げる「3つの維新」は、「産業維新(山口を「宇宙が日常になる地球の玄関口」へ)」、「大交流維新(データを活用した人流の創出と周遊活性化)」、「生活維新(空から届ける毎日の安心・安全)」となります。

松田社長が提示した「3つの維新」の詳細

では、3つの維新についてもう少し深掘りしてみましょう。

産業維新(宇宙と地球の玄関口)は、山口を「宇宙が日常になる地球の玄関口」と定義し、宇宙からのデータを山口に集約させる構想です。将来的に宇宙空間へ設置される構想の「AIデータセンター」で計算された高精度データを地球上で受信・処理する主要拠点として山口衛星通信所を活用し、関連産業や事業創出を促進します。

大交流維新(人を呼び込み、データで捉える)としては、位置情報ビッグデータを活用し、コロナ禍で大きく減少した人流の回復や観光施策の効果検証を行います。

また、スマートフォンが衛星と直接つながる「au Starlink Direct」を投入することで、これまで圏外だった山間部や観光地でも通信を可能にし、新たな人の流れを可視化します。

生活維新(ドローンポートによる地域防災)では、全国1000拠点の配備を目指すドローンポート構想の一環として、山口県内にも約20拠点を整備します。平時は橋梁などのインフラ点検、防犯、鳥獣被害対策に活用し、災害時には孤立集落の状況把握や物資輸送など、発進から目安10分以内に現場へ駆けつける体制の整備を目指します。

グループインタビューで語られた山口でのデジタル人材育成と組織活性化

KDDIは、2026年3月に開設された「KDDIアジャイル開発センター(KAG)」の山口オフィスと連携し、地元の教育機関や企業と共にデジタル人材の育成に注力しています。

首都圏一極集中における災害リスクを懸念し、店舗や基地局(全国10万局以上)といった物理的資産を維持・管理するためには、地方の土地勘を持つ人材と組織体制が不可欠であると指摘しました。

松田社長によると、過去の失敗を踏まえた新人事制度を導入しているとのこと。かつて新入社員を単身で地方に配置した際に定着しなかったという失敗経験を踏まえ、現在は若手と中堅社員がペアで地方勤務を経験する形へと変更を進めています。地方での実務経験を通じて会社や地域への愛着・帰属意識を育み、組織全体の活性化を図る狙いを説明しています。

また、ドローン実証実験などの知見を踏まえ、「平時からの訓練なくして有事の活用はない」と強調しました。単なるビジョンの提示にとどまらず、日々の具体的な成果を積み重ね、事業として適切にマネタイズしていく経営姿勢が語られています。

KDDI山口衛星通信所を見学

包括連携協定の取材後には、KDDI山口衛星通信所の見学もさせていただきました。ここは、KDDIの前身である国際電信電話(KDD)が1969年に開設した施設です。山口市仁保(にほ)の地が選定された背景には、衛星通信を運用する上で極めて理想的な地理的・電波的条件が揃っていたことが挙げられています。

赤道上空3万6000kmに位置する静止衛星のうち、日本からは「インド洋上空」と「太平洋上空」の双方の衛星をカバーする必要があります。山口市は、この両方の空域に位置する衛星を1つの拠点から同時に見通すことができる、日本国内でも極めて珍しい地理的条件を備えています。

通信所が位置する山口市仁保は周囲を山々に囲まれた盆地状の地形です。この自然の遮蔽物によって、都市部や地上から発せられる様々な不要な電波ノイズ(電波干渉)が遮断され、宇宙からの微弱な電波をクリアに受信できる環境が保たれています。

また、地震や台風といった自然災害が比較的少ない気候・風土であるため、24時間365日の連続運用が求められる国際通信インフラとして高い安全性を保持できます。広大な敷地内に将来の設備追加に対応できるゆとりが存在することも、長期的な拠点の選定理由となっています。

一般開放されている見学施設「パラボラ館」および広大な屋外敷地では、日本の国際通信史から最先端の宇宙通信技術までを多角的に体感することができます。人工衛星やロケットの模型、国際放送送信現場、海底ケーブルの展示など、衛星通信にまつわるさまざまな機器、技術を見学できるのが特徴です。

*記載内容は、公開日もしくは更新日時点のものです。最新情報については、必ず各公式ページをご確認ください。

この記事は役に立ちましたか?
佐藤文彦

塾講師からの転職後、編集プロダクションを経てフリーライターに。ケータイ業界を中心に、ガジェット、通信技術に関する情報を幅広く取材中。三度の飯よりレビューが好き。スマートウォッチを付けていられる腕が足りないことが最近の悩み。(X:@fumihiko_sato_x

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

コメントを残す

目次