Genspark CTOが語る「組織全体がAIエージェントで動く未来」。エンジニア49人で年間28機能を実装できた理由

キャリア・通信

*本ページ内のリンクには広告が含まれています。

生成AIスタートアップGensparkがラウンドテーブルを開催し、CTOのカイホア・ズー氏が同社の最新の進捗や、将来ビジョンを披露しました。Gensparkは、過去1年間でGenTeams、GenMail、Second Brainなど、28の機能を公開したといいます。筆者も、メーラーのGenMailを中心に、よく利用していますが、なかなか使い勝手のいいサービスが揃っていますよ。

ここでは、ラウンドテーブルにて語られたGensparkの現在地とこれからのビジョン、カイホア・ズー氏のインタビューについてまとめていきます。

「AI活用レベル1」にとどまるユーザーが大半

ズー氏によると、現在、大多数のユーザーは、AIの活用度合いが「レベル1」にとどまっているとのこと。ここで言うレベル1は、ChatGPTなどを検索の延長である会話型AIとして使っているだけの状態です。

一方、一部のユーザーはエージェントにスライドや文書、動画、画像の作成を依頼し、多額の費用を支払っている「レベル3」に達しているとのことです。

しかしAIの能力そのものはすでに「レベル5」に達しており、Gensparkの狙いは個人の成果物作成を支援することではなく、組織全体がAIエージェントの上で運営される状態にあると強調されています。要するに「もっとうまくAIは使えるぞ!」と余力があることをアピールしているわけです。

Gensparkのソフトウェアエンジニアはわずかに49人。少人数でありながらこの水準を達成できているのは、社内のオペレーション自体がAI化しているからだと説明されています。単にタスクを完了するエージェントや、見栄えのよいスライドや文書を作るだけのサービスではなく、組織の業務を支える基盤を目指すとのことです。

この事業推進スピードの中核を担うのが、「Second Brain」です。メール、会議メモ、プロジェクト履歴、Outlook、Notionなどの、利用者に関係するあらゆる情報を統合管理することで、Messenger、Slack、Webなど、どの入口でも共通のインターフェースからアクセスでき、利用者は特定のエージェントや画面に縛られなくなります。

スライド生成価格を高級モデルの6%まで下げた3層のコスト最適化

Gensparkが力を注いでいるのがコストの低減です。手法は大きく3層に分かれているとのこと。1つ目は、タスクに応じて適切なモデルを自動で選ぶ「モデルルーティング」。単純な質問に高価なモデルを使わないようにする仕組みです。2つ目はオープンウェイトモデルのファインチューニング。3つ目は、通常処理を安価な実行モデルに任せ、判断に迷ったときだけ高価なモデルに切り替えるといった実行基盤の改良です。

その成果が、9月18日に公開された初のファインチューニングモデル「Gen-1 Slides」です。スライド生成の性能はClaude 3.5 Opus並に達しながら、価格はそのわずか1/17まで抑えられています。スーパーエージェントのトークン費用も、過去3か月で元の35%まで削減されています。この最適化を背景に、有料利用者向けにクレジットを消費しない週次の無料利用枠の提供も始めるなど、太っ腹な展開をしています。

なお、オープンウェイトモデルの利用にあたっては「データは中国やモデル開発企業に渡るのでは」という懸念も想定されるためか、ズー氏はデータ保護にも言及。米国内の推論プロバイダーの採用とゼロデータリテンション契約の締結を徹底し、リクエストへの応答後にデータは保存・閲覧・学習利用されないと保証するといいます。企業での導入を考えるうえで、ここはチェックしておきたいポイントです。

少人数で高速に回す開発体制

社内開発においても、個人の生産性を最大化する高度な自動化基盤が稼働しているといいます。人間が課題への着手を指示した後は、独立したビルドや検証、コードレビュー、テスト動画の生成までをAIが自律遂行し、人間は最終判断とマージのみを担う体制を構築しています。

これにより、直近2週間だけでも200万行を超えるコードチェックと2500件超のプルリクエスト処理を成し遂げており、大企業なら数百人から千人規模を要する開発スピードを実現しているとのことです。また、エージェントを人間と対等な存在として扱うコミュニケーション基盤「GenTeam」や、組織の知見を集約する「Team Brain」を介して、人間に依存しない広帯域な情報伝達を実証しているとしています。

日本には1億規模の投資を計画

ラウンドテーブル後には、わずかな時間ですがズー氏へのインタビューを行えたので、そちらの内容も合わせて紹介していきます。

まずは日本市場への取り組みについて。ズー氏によると、Gensparkの主要3市場は米国、日本、韓国となっていますが、これは意図的な市場選択の結果ではなく、創業当初から広告宣伝をほとんど打たず口コミだけで広がっていった結果、「市場が自らGensparkを選んだ」のだと振り返ります。最近ではインドや欧州の伸びも好調だといいます。

日本への本気度は数字にも表れています。今年1月に日本オフィスを開設したのに続き、7月の会見でも投資継続を表明しており、今回は日本市場向けに1億規模の投資を計画していることを明かしています。

日本を重視する理由としてズー氏が引き合いに出したのが、4月に日本で参加したカンファレンスで議論された、労働力人口の減少です。他国では「AIが仕事を奪う」という論調が中心ですが、人手不足が構造的な課題である日本では、むしろAIが労働力のギャップを埋める追い風の構図であり、オールインワンの仕事環境を掲げるGensparkの方向性と、自然に噛み合うというわけです。

「常時稼働エージェント」には後ろ向き

最近話題のOpenAI「dots」のような、デバイスを常時監視して動き続けるパーソナルエージェントを提供する計画があるのか、という質問には「持っていないし、計画もない」と明確に否定。こうした製品は誕生日プレゼントの購買代行のような「個人の生活」向けのエージェントであり、Gensparkが注力するのはあくまでビジネスシーンで、成果物や文書の生成を通じて組織の中で働きやすくすることだと線引きしました。

とはいえ利用を禁じるわけではなく、ユーザーがGensparkを他の用途に使うのは自由と説明。ただ「エージェントにクレジットカードを渡して買い物させる」といった使い方は、同社としては積極的に推奨しないとのこと。個人エージェントと仕事エージェント、どちらに重心を置くかの違いだと強調しています。

Second Brain Noteは「録音・要約ツール」ではない

各社からAIボイスレコーダー的な製品が出る中で、9月のAppleの発表でApple Watch Series 12にAudio Intelligence機能が搭載されたことについても質問。Apple Watchは手首でさっと録音できる利便性があり、競合に見える場面もあるはずですが、ズー氏自身は競合と捉えていません。

核になるのはあくまで仕事に使うあらゆる情報を保持する持続的な記憶であり、Second Brain Noteはその延長線上にある機能だという位置づけです。録音やメモそのものが本業ではなく、真価は後の仕事で発揮されます。例えばスライドや文書を作るときに過去の会話を参照したり、記事を書くときに「この前の会話で正確にはどう表現していたっけ」と聞き返したりできるなど、Second Brainに接続する情報が増えるほど強くなるため、他社製品との接続も、むしろ歓迎的だといいます。

個人ユーザーへのセキュリティ指南

個人情報漏洩やAIによる攻撃の高度化が連日報じられる中、個人ユーザー側ができる対策を尋ねた質問には、まずGenspark自身の体制から説明が始まりました。サービスはMicrosoft Azure上で稼働しており、Azureのセキュリティチェックやガードレールを活用しているとのこと。個人情報とセキュリティには自社内でも最高水準を課しているといいます。

個人へのアドバイスとしてズー氏が挙げたのはシンプルで「信頼できるサービスを使い、何をやっているかを理解すること」。今年1月に公開されて大きく話題となったオープンソースの「OpenClaw」を例に、自分で構築して中で何が起きているか分からないまま使うのは危険だと警告しました。例えば12個ものAPIキーを設定に入れているなら、その仕組みを理解しておくべきで、鍵を失くしたときに何が起きるか把握していないと取り返しがつかなくなると説明しています。

目指すのは「選択肢を取り戻す」こと

最後に「Gensparkはどんな世界・サービスを作りたいのか」を伺いました。ズー氏は「ショート動画を見続けさせるサービスではなく、本当に役に立つ仕事を成し遂げる手助けをしたい」としています。生産性が上がって浮いた時間で、もっと働いて成果を出すか、人生を楽しむかという選択肢をユーザーに取り戻してほしい、と語ります。

象徴的なエピソードとして挙げられたのが、翌朝締め切りのスライドに追われ、深夜2時にGensparkを使い始めたユーザーの話。わずか30分で仕上げたスライドに同僚が驚き、翌日にはチーム全体がGensparkを使い始めたそうです。「締め切りや課題に追われるのではなく、自分の人生の主導権を取り戻す。それがGensparkの原点」だと語られています。

*記載内容は、公開日もしくは更新日時点のものです。最新情報については、必ず各公式ページをご確認ください。

この記事は役に立ちましたか?
佐藤文彦

塾講師からの転職後、編集プロダクションを経てフリーライターに。ケータイ業界を中心に、ガジェット、通信技術に関する情報を幅広く取材中。三度の飯よりレビューが好き。スマートウォッチを付けていられる腕が足りないことが最近の悩み。(X:@fumihiko_sato_x)

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

コメントを残す

目次