大手通信4キャリアがそれぞれ11月に上期決算を発表しました。好調を維持するKDDI、ソフトバンクの2キャリアに加え、楽天モバイルはEBITDAで黒字となるなど順調に推移する一方で、最大手となるドコモにとっては、厳しい状況が続いています。
irumoの廃止、ネットワークの不安定さで減収減益のドコモ

ドコモの2025年度第二四半期決算では、営業収益が3兆327億円(前年比1.3%増)、営業利益は4747億円(前年比14.2%減)、四半期利益は3398億円(前年比12.7%減)となります。法人、スマートライフセグメントで増収増益を達成した一方、コンシューマー通信事業が減収減益となり、足を引っ張る形になりました。


コンシューマー通信事業の減収減益については、減少幅こそ徐々に小さくなっているものの、販促強化費用、ネットワーク強化の対策費用がかさみ、営業利益が大幅に減少しています。ドコモの代表取締役社長の前田氏によると、MNPによってユーザーを取られることが多くなっているようです。
また、NTT社長の島田氏は、MNPの減少要因の1つに「irumoの0.5GBプランをやめたこと」を挙げています。月々550円で維持できる激安プランがなくなったことで、競争力が低下した格好でしょう。ただし、激安プランは他社へMNPをする際に得られる特典目当てで、踏み台のように短期契約をするユーザーが多いもの。そのため、数字の減少は一過性のものという見方もできます。
一方で、根強く残るのが通信品質の問題です。ドコモユーザーの中には体感している人もいるかもしれませんが、ドコモは5Gエリア構築で他社に遅れをとっており、局所的に通信が途切れるといった問題が起こっています。5G SAのエリアに関しても、他社と比較して少なく、スポット的な展開しかできていないのが現状です。
2025年度に入り、ドコモは5G基地局の建設を積極的に進めており、2023年度末と比べ、2025年度上期末時点の5G基地局数は約1.3倍に到達。島田氏は2026年度にかけての通信品質改善も明言しており、前田氏によると、2025年度下期は、上期の約3倍の基地局数を構築する目処が立っているとのことです。

これまでも、デュアルバンド対応MMU(大容量通信に対応した最新型基地局装置)の導入、HPUEの開始、Sub6対応レピーターの導入など、急ピッチで通信品質の改善に取り組んでいるドコモですが、ユーザーの離脱が加速する前に、目に見えた結果を残せるのかが注目ポイントとなるでしょう。また、第2四半期ではARPUが3960円まで拡大し、ドコモMAXの加入者が150万を突破、解約率は0.69%にとどまるなど、明るい話題もあるため、弱点の早期改善に期待したいところです。
各社代表もコメントを残す。楽天モバイルの「ネットワーク最強」宣言

各社の決算会見において、注目するべきポイントが、楽天モバイルの「ネットワーク最強を目指す」という発言です。
引き金となったのは、9月30日に開催された、楽天モバイルのプレスカンファレンスです。各社が時代の潮流に合わせ、料金プランの値上げしながら、コンテンツでの勝負へと移行していく中、楽天の三木谷会長は「値上げをしない」宣言をしました。

まず噛みついたのが、ソフトバンクの宮川社長です。通信キャリアの基地局整備に多大なコストがかかる要因として、山間部や離島といった場所でのエリア構築は、工事代がかかる反面、トラフィック量が少ないことを説明しながら、KDDIのローミングに頼った状態はアンフェアと釘を刺しています。
そもそも楽天モバイルが総務省から周波数を割り当てられているのは、全国津々浦々でネットワークを整備するという約束があるためです。2020年の楽天モバイル商用開始から5年以上が経過した現在も、KDDIのローミングに頼り続けている中での「ネットワークで最強を目指す」宣言は、看過できないものだったのでしょう。

一方、ローミングを提供しているKDDIの松田社長は、「私どものローミングを含めてのことだろうと認識している」とコメント。続けて、「楽天モバイルが自前のエリアを構築するまでの間、暫定的にお貸し出ししているに過ぎない。こちらの考えに沿って進めていきたい」と、余裕を見せながらも、あくまでローミングは一時的な対応であり、自前でのエリア構築を促す格好となっています。
ちなみに、KDDIと楽天モバイルの契約は、2026年9月30日までの予定となっています。契約を更新するのか、満期終了という形を取るのかは不明。KDDIのローミング収入は年間数百億円となっているため、判断が難しいところです。1000万契約が目前の楽天モバイルにとっては、通信品質の低下は是が非でも避けたいところなので、ローミング料金を値上げしてでも、契約を更新する可能性すらあるでしょう。
4キャリアの中では、最後に決算会見を行った楽天モバイルは、楽天グループ全体での会見ということもあり、ソフトバンク、KDDIのコメントに対するアンサーは得られませんでしたが、ローミング契約の終了時期が近づけば、自ずと次なる一手が見えてきます。第4のキャリアとして、サービスイン当初から注目を集める楽天モバイルですが、まだまだ目が離せません。